〜遠い昔の伝説〜
 
それはこの地におりたった
それは空からおとずれた
この世界にひとり 動けぬ体でひとり

かえろう そらへかえろう
かえりたい そらへかえりたい

こどもたちよ わたしをたすけて
こどもたちよ わたしをそらへ
おまえたちはそのためにうまれたのだ
   

「旅立ちを見届ける一族」に伝わる民謡
訳:ショーン・コスギ





3
〜ルエミーザ博士〜

それは、突然のことであった。

大学の講義を終え、安堵と共に研究室へ戻った私の元に差出人不明の封筒が届いた。
消印はもう数ヶ月前の物で、長い旅をしたのだろう、薄汚れ、ところどころ擦り切れていた。

全くもって不気味な封筒だったが、私は開ける前から差出人の予想はついていた。
そしてそれは、最悪の形で的中する。

『ついにみつけたぞ。私の勝ちだ。』

見慣れた文字でそう書かれた一枚の紙切れと、今まで見た事のない紋様の入った一枚の金貨。

それは紛れもなく『あの男』の文字だった。短いが確かな自信の読み取れるその手紙から聞こえ てくる『あの男』の笑い声が、久々の休暇を前に踊る私の心を粉々に粉砕し、例えようのない敗北感で満たした。

しかしそれは同時に、私の闘争心と何よりも好奇心に火をつける事となった。
全ての文明の起源となった、未だ知られていない古代文明。そんな物が本当に存在するのだろうか? いや、それは絶対にあり得ない。私が私自身の目で確かめ、証明し、『あの男』の妄想を叩き壊してやる。 もしも本当にあると言うのなら、なおさら自分の目で見なければ気がすまない。

私はかつてない冒険を予感しながら、準備もそこそこに旅立った。

そこにあると言う伝説の地、La・Mulanaへ。
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